【学部3年生以降向け】建築学生も情報発信に力を入れると良い理由

インターネットの発達に伴い、それを用いてできることの幅が急速に変化してきています。

中学・高校生の頃にはすでにスマホSNSがあった世代にはピンとこないかもしれませんが、ここ10年ほどの間でインターネット上のコミュニケーションの在り方はエグいくらい変わっています。

特にここ3,4年の動きを見ていて、いまの学生さんは大学での学びと合わせて、学生時代から情報発信に力を入れていくと良いと思うよ、と感じています。

先生方はそんな話はしないでしょうが、いまの教授世代の人と学生とでは、これから身につけるべきインターネットでのコミュニケーション能力がまったく異なるので、参考にしてみてもらえると嬉しいです。

 

僕のようにウェブの片隅で細々と記事を書いている人間にも、会ってみたいと思ってくださる方はいるようで。

そういった建築学生の方とお話していて、ご自分でなにか発信してみようとは思わないのか、と聞くと、多くの人が不思議そうな顔をします。

なぜ学生が発信しなければならないのか、建築(に限らず)を学びきれてもいない中途半端な自分がなにかを表に出すことにどんな意味があるのか、と。

でもそうした人たちでも、公募のアイディアコンペに応募したり、大学の設計課題で評価されたい、あるいは先生には伝わらなくてもだれかに共感してほしい、という思いはもっていたりします。

この時点で、発信するための動機はもっていることになります。

そうでなければ、だれにも見てもらえなくてよいから、自分のノートにひたすら設計のアイディアを描き溜めるだけで満足できるはずですから。

 

動機はある、ではメリットの方はどうか。

 

建築をつくるという仕事は、学生の皆さんが思うよりはるかにたくさんの人との意思共有が必要な仕事です。

どれほど素晴らしいアイディアを思いついても、意思決定者に伝わらなければ実現することはできません。

あるいは意思決定者のGOが出たとしても、実現までにはそのプロジェクトに関わる大勢の人と情報を共有しながら進めていく必要があります。

大きなプロジェクトになればなるほど、また関係者同士のつながりが即時的であればあるほど、コミュニケーションにかかるコストは膨れ上がっていきます。

関わる人が多いほど伝言ゲームのように繰り返し同じ情報を伝えていく必要がありますし、またあるプロジェクトでのみ協働する関係であればそのために新たな関係性を構築する必要がありますから。

仕事のデキる人というのは、このコストを抑えるのが非常にうまいです。

短く完結かつ意味の取り違いが起き得ない言葉を用いて、自分の伝えたいことを表現する。

それによって無駄なコミュニケーションを減らし、どれだけ忙しくなってもひとつひとつのプロジェクトをきちんと管理できる。

 

多くのコンペを獲り多数のプロジェクトを抱える建築家も、同じスキルが高い人が多いです。

短い言葉で自らの理想とする建築のテーゼを表すことや、スケッチ一枚でどんな建築を構想しているのかわからせてしまうスキルもそこに含まれるでしょう。

 

SNSを活用するメリットは、フォロワーを増やして有名になることではありません。

自分の考えを表明し、それにどの程度共感してもらえるのか、確認しながら自らにフィードバックし思考を深めていくことのできる場です。

同じことを言っていても、言葉一つで伝わり方が違います。

日々試しながら、どんな表現であれば正確に伝わるのか、磨いていった先に、自分の考えに関心をもつ人とのコミュニケーションが生まれてきます。

 

近い考えをもった人同士であれば、「こんなのも参考になるよ」という情報交換ができたり、同じ考えをもつ人同士で新しいことをはじめられるかもしれません。

反対意見を投げかけてくる人がいれば、「なるほどそういう考えもあるのか」と自らの考えを再考するきっかけになります。

もちろん、意図が正確に伝わっていないのであれば、自らの発信した言葉に問題があったわけですから、表現を洗練する契機にもなります。

 

これは身の回りにいる人同士でのコミュニケーションでは得難い経験です。

お互いにバックボーンを知りつつ、互いの話に耳を傾けられる関係性であれば、正確に意図が伝わるまで説明することができます。

けれどその関係に慣れてしまうと、極めて限定的な場でのコミュニケーションしかできない人になってしまいます。

これからの時代、どんな人もビジネスの現場において自身の考えを不特定多数に伝える場面が必要とされていくでしょう。

そうなった時、日常的にSNSでのコミュニケーションを活用し、考えをまとめ、発信し、フィードバックすることを繰り返している人は強い。

どんな仕事においても活用できるスキルを日常的に磨いていけるインフラが整っているのに、使わない手はありません。

 

それこそTwitterの140文字からバズって商品化、なんてことも起こり得る時代です。

発信する動機もあり、だれにでもそのメリットが明示されている。

さらに建築学生である皆さんは、イメージをビジュアルで表現するスキルも併せもっているわけです。

その恵まれた状況をまずは自覚し、資産形成のつもりで発信に取り組んでみてください。