拝啓、コロナ禍に不安を抱えている建築学生だった僕へ

こんにちは。

新型コロナウイルス禍のなか、いかがお過ごしでしょうか。

 

刻々と状況が変化するなかで、毎日のように「アフターコロナ」や「withコロナ」時代の生活に対する提言や未来予測を目にするようになりました。

5月4日には厚生労働省より「新しい生活様式」の実践例が提示され、SNS上でも大きな反発を生んでいます。

 

特に社会人経験のない学生さんのなかには、講義やゼミも不十分な状態でネット上の過激な言説に触れ、不安に感じている方も多いのではないかと思います。

僕自身、東日本大震災と福島原発事故により日本中が大混乱となった時期に学生生活を送り、大きな精神的負荷を感じていた時期がありました。

当時のことを思い返しながら、もしいま自分が建築学生だとしたら何を意識して日々を過ごすと良いか、まとめておこうと思います。

 

○覚書として

東日本大震災のときも、現在のコロナ禍も、いずれも人々の生活に携わる職業人であればなにかしらのアクションなり提言なりをしたくなる時期なのだと思います。

史上かつてないほどの非常事態を受け、その前後の人々の生活が大きく変わるのは当然のこと。

建築学生であれば、その未来の生活を見据えていま取るべき対策を講じたいと思うのも自然のことと思います。

東日本大震災時も、数多くの建築家が復興事業や津波の危機と共存するための建築や都市のあり方に対して、さまざまな提言を行いました。

しかしながらそうした提言が効力をもち、実際の建築物や人々の行動に影響があったのはごく一部に限られたものだったと思います。

復興バブルと言われるほど建設業界が潤ったのと対称的に、建築を取り巻く言説はその後の2~3年間、無力感を伴った状況に陥りました。

ふたたび日本の建築界が元気を取り戻したとき注目を集めたのは、事態を客観視して大きなストーリーを描くのではなく、混沌とした状況に飛び込んで愚直にできることを実践していた人たちにほかなりません。

 

震災時といまの状況とで大きく異なるのは、前者ではそれまで当たり前に享受していた基盤が一瞬で揺らいでしまったのに対し、後者においては少しずつ進行していた新しい生活に対する変化が、急速に加速する機会を得たという点でしょうか。

キャッシュレス決済やサブスクリプション型のコンテンツ消費、オンラインミーティングを駆使した在宅勤務など、この時期急速に伸びているのは少しずつ社会に浸透しはじめていた新しいサービスです。

こうしたサービスが更に普及し、すべての経済活動を支えるインフラとして機能するかのような前提のうえで語られるビジョンも多く見受けられます。

ただ、忘れてはならないのは、現在そうしたサービスを駆使してこの状況に対応できている産業は市場全体のほんの一部であり、上述のような前提のうえで未来を語る側の人たちは、コロナの影響を受けずにいままで通りの活動ができているごく限られた人たちであるという事実です。

 

○不確実で過激な未来予測に振り回されない

メディア上では日々さまざまな分野の専門家による未来予測の記事が散見されます。

そのなかには数カ月後あるいは数年後に振り返って「正しい」記事だったことが証明されるものもあるかもしれません。

ただ、あくまでもそれは結果的にそうだったというものに過ぎないこと、ほんの少しの要因の変化によって大きく異る結果に終着する可能性も十分ありえるという前提で読まれるべきものと思います。

ほんの数ヶ月前まで、日本政府がオリンピックを予定通り開催すると宣言していたことを忘れてはなりません。

 

今日現在の実数値や人々の行動を観察する限りにおいて、限りなく確からしい予測を立てることはできても、翌日にはその前提が覆る可能性が十分にあるわけです。

さらに多くの目に触れるよう加工された情報は、それなりのバイアスがかかっていると留意しておくべきでしょう。

ひとつひとつの情報に一喜一憂することなく、適度な距離感をもってそれらと接する態度を身につけましょう。

 

○信頼できる情報発信者を見分ける

これだけ情報が溢れてくると、賢明な発信者ほど注意深くシェアするべき情報を選定するようになります。

誤った情報の拡散や根拠のない情報を自らの利益に結びつくようなかたちで拡大解釈して発信するような人とは距離を置きましょう。

一方で、確かなエビデンスを元に情報発信や流言する情報の検証をしている信頼できる発信者を見つけることは、その後の長期にわたって有益な情報を提供してくれる良き資源になりえます。

このような状況下だからこそ浮き彫りにされるリテラシーの精度を最大限に活用して、今後のあなたに役に立つ情報源をストックしていきましょう。

 

○観察者としてのスキルを磨く

あなたは社会を構成する一員であると同時に、その社会に何かしらの働きかけを行うことで対価を得、生活する人でもあるわけです。

したがってどのような状況で人々がどのような反応を示すのか、客観的に観察し自らの行動に反映させるスキルは身につけておくとこの先のさまざまな場において役にたちます。

実地でのフィールドワークが難しい状況ではありますが、この環境のなかで活用できるリソースを十分に活かし、良き観察者になる方法を探りましょう。

実際の観察方法については、社会学系の考え方が参考になると思います。

また同様に歴史に学ぶことも重要です。

世界規模でのパンデミックは、今回に限らず人類史上幾度も繰り返されてきた現象です。

その前後でどのように社会が変わりそして変わらなかったのかを知ることは、さまざまな状況において判断基準を強化してくれることでしょう。

 

○そのほかできること

この先社会がどう変化しようが、普遍的に役立つスキルの向上に投資しましょう。

具体的なスキルはあなた自身が決定すべきものですが、幸いなことにさまざまな企業が「おうち時間」の充実のためにと各種サービスの無料・値下げキャンペーンを実施しています。

毎日ひとつずつ試してみるも良し、これを機に新しいことにチャレンジしてみるのも良いでしょう。

人と会う機会が減ることで、気持ちが落ち込んでしまうと何をするにも効率が悪くなってしまいます。

何かひとつでも没頭できることを見つけて心の健康を保ちつつ、毎日少しずつでも前進できているという実感をもてる生活を送りましょう。

不安で何も手につかない、それによってさらに不安が増していく悪循環だけは避けるようにお願いします。

日々の積み重ねだけが、自らを強くしてくれるのですから。