【学部2~3年生向け】建築学生なら将来のキャリアを見据えて大学生活をデザインしよう
建築学科のなかでも国公立の工学部に属する場合、学部2年生時にコース選択、4年生時に研究室配属、というルートが一般的でしょうか。
今回は、将来自分がどんなキャリアを選択したいか、そのためにどのような学生生活を送ると良さそうか、考えてみたいと思います。
かく言う僕自身は、大学・大学院で建築を学んだ上で、設計とは異なる職種で建築と関わるルートを選びました。
以下偉そうにいろいろ宣うつもりですが、あくまで1つの人生しか経験しておらず、人に誇れるような成功もしていない、けれどそこそこ幸福な生活を送っている1人の男性が妄想したフィクションとしてお楽しみください。
1.どんなキャリアを考えているか?
建築学科を出た後のルートを大別すると、ざっくり以下のようになるかと思います。
※筆者の経験上、意匠系コース選択者を念頭に置いています。
①ゼネコン設計部、組織設計事務所など、会社員として建築設計に関わる
②ディベロッパーほか開発系の会社で設計の前段階の仕事に関わる
③建築家として独立を目指し、アトリエ系事務所のスタッフになる
④広告業界など建築以外のクリエイティブ産業に従事する
⑤進学し研究職を目指す
⑥いきなりフリーランス
建築学科では歴史や構造の授業のほかに、設計課題に取り組みます。
設計課題には明快な正解がなく、自らの興味関心次第で何を探求し表現するのか、自由に選ぶことができます。
また学生時代は長期休みをはじめ課題がない時期は、自由な時間が取れますので、サークル活動やアルバイト、自主的な創作活動など何に時間を充てるのかも自由です。
そのため将来どうなりたいのかによって、
課題ごとに探求すべきことを考える
学生時代に身に付けておくべきスキル・知識を考える
ことが重要になります。
それぞれの大学や教授の方針によって、授業・課題・論文等を通じてどのような人を育てたいのか、ある程度定められていると思います。
しかしその方針と自身の希望が合わない場合、言われた通りに課題をこなしているだけでは不十分なんですね。
授業はともかくとして、課題や論文においてはある程度自由に取り組むことができる、建築学科の特性を活用し自らの成長に活かす。
そのためにまずは将来像を描いてみましょう。
2.いつでもルート変更する勇気をもって、ゴールを目指す
将来像はどれだけ実現性が薄かろうが、できるだけ明確にする方がよいでしょう。
重要なのは何か目標を設定して、そのために必要なことを逆算して経験を積んでいくことです。
上述したように職種でなくても、「30歳までに個人住宅を設計する」とか「建築に関する新しいサービスを立ち上げてユーザー数100万人を達成する」など自分が具体的に目標にできることならなんでも良いと思います。
将来像が描けたら、そのために卒業までの数年間になにをすべきか、考えてみましょう。
たとえば将来建築家になりたくて、明確に「卒業後あの建築家の元で修行したい」と思う対象がいるのであれば、卒業時にその建築家に雇いたいと思われる人間になっていればよいのです。
そこが明確になっていると、個々の課題にどのように取り組めば良いか、あるいは課題だけでは不十分であれば学外のコンペで実績をつくるとか、必要なことが明確になってきます。
その建築家が書いている文章をチェックし、作品を自分なりに理解する努力をし、そのために必要な知識を構築する。
インターンなど直接対面できるチャンスを作り、スタッフとして働くために何が必要なのかを知るのでもよいでしょう。
ゴールを設定し、そこにたどり着くための道をデザインする、そして実際に一歩踏み出してみる。
とてもシンプルですが、これを意識して実行に移せるだけで、その辺の会社員より使える人材になり得ます。
で、重要なのはここからです。
以下に記すことを学生時代から実践できるのであれば、どこに行っても必要とされることでしょう。
3.学生時代にどんな経験を積みたいのか、考えてみてほしい
ゴールにたどり着くために設計した道を進みはじめると、必ずなにかしらの支障が発生します。
知識習得のために読んだ本が難しすぎる、自分の研究分野の資料が英語文献しかない、1人では達成できないプロジェクトを成し遂げたいのに同志が集まらない…
この時にどのような対処方法を選ぶのか、その対策と結果が何よりも重要な「経験」として積み重なっていきます。
それこそが、学生生活をデザインすることの大きなメリットになります。
愚直に直面した課題を解決するための方法を探してトライするのか。
違う方法で同じ結果を得られる方法を探すのか。
他者に協力してもらうのか。
あるいは諦めてゴール自体を設定し直すのか。
どんな方法を採ろうが、その課題と対峙した後の自分はそれ以前の自分とは違う人間になっています。
そうした経験を積んでいくと、自分はどんなことが得意なのか、どんなことに興味があるのか、なにをしている時が楽しく、反対に苦手なことや憂鬱なことはなんなのか、段々とわかってきます。
努力で解消できる部分、あるいはどんなに頑張ってみても直せない欠点も見えてきます。
それこそが個性なのでしょう。
同じ課題に直面しても、人によって解決のためのアプローチは異なります。
自分にはこの方法が向いている、それが認識できた上で、もう一度ゴールに目を向けてみる。
果たしてこれまでと同じゴールに進みたいと思うのか、あるいはゴールを設定し直すのか。
ビジネス用語で使われるPDCAとは、まさにこのプロセスのことを指しています。
会社としての目標なのか、個人の目標なのかの違いだけで、やっていることは同じです。
これができればどこに行っても通用するよ、というのはそのためです。
大手企業の採用面接では、こんな質問をされることが多いです。
あなたという人間を表現してみてください。
これは、「僕の好きな食べ物は○○です。好きなミュージシャンは○○で、尊敬する人物は…」といったことを聞いているのではありません。
学生時代になにを目標にどんなチャレンジをして、課題に対してどのような解決策を実行したのか、というあなた個人の経験を通して、あなたという人間がなにを得意としていてどんなことに関心があり、どのような仕事で活躍できそうか、といったことを測っているのです。
状況に合わせていくつものエピソードから的確な経験を語れる人が強いのはおわかりでしょう。
途中でゴールを設定し直す、という経験も、いままで以上にこれからの時代重要になってくると思います。
終身雇用が崩壊し、大手企業に勤めて順調にキャリアを進めていけば安泰、という時代ではなくなってきました。
僕の周りでも、大手組織設計事務所で大きな仕事を経験した後、建築の将来性に疑問を感じて転職し建築業界ではない会社でキャリアをリスタートした人、独立を目指して有名アトリエに入所した後、ゼネコン設計部に入社し規模の大きな設計に関わる道を選択した人など、就活時点とは大きく異るキャリアを選ぶ人が増えてきました。
一度設定したゴールを目指して確実に歩を進め、そこでの経験を通してゴールを設定し直すことができる人は強いです。
大学の設計課題では、評価軸がある程度定められているために、学生もそこで評価されることを目的にしてしまいがちです。
もちろんそれも重要なプロセスなのかもしれませんが、大学が求める人材に自分がなりたいかどうかを選ぶのはあなた自身です。
自らの目的に合わせて学生生活をデザインし、どのような経験を積みたいか、一度考えてみてほしいなと、思っています。