ビジネスライクな設計課題への取り組み~先輩のお手伝い編~

年始休暇がそろそろ終わりますね。

大学が始まったら、先輩の卒業設計あるいは修士設計のお手伝いを予定している建築学生も多いと思います。

 

僕自身は学生時代、先輩の手伝いからは逃げに逃げ、一度も動員されることなく自ら取り組みたいことに集中しました。

先輩の手伝いをすることに意義を見出だせなかったためで、よほど明確な目的がない限りは貴重な時間をもっと違うことに投資すべきだと思っています。

ところが、年末久しぶりに会った友人が、学生時代に戦略的に数々の先輩の手伝いに取り組んでいたというので、どんなメリットがあるのか聞いてみました。

彼の経験も「それはそれでアリだな」と感じたので、どういうケースにはお手伝いが有意義になり得るか、まとめておきたいと思います。

 

基本的に大して得るものがないことは自覚しておこう

卒業制作ともなると、1ヶ月前には敷地模型などプランが固まっていなくても着手できる制作物をつくり始め、ラスト2週間で各スケールの模型や図面、パース、ドローイングといった提出物を揃えるのが基本だと思います。

タイムマネジメントがしっかりできている人ならともかく、多くの場合ギリギリまで最終のアウトプットが決まらず、最後の最後に多くの後輩を動員し連日徹夜で完成させるという人も多いはず。

せっかく頑張って模型を作ったのに、プレゼンでは一切触れられずに終わり、などと虚しい思いをした人もいることでしょう。

そこから学べることの多くは、お手伝いという名の奉仕でなくともより効率的に学ぶ機会はつくれるものです。

 

模型の作り方や図面・ドローイングといった表現においては、先輩に教えてもらうよりも自らの制作物として試行錯誤する方がはるかに定着するでしょう。

ほぼ無給のお手伝いより、設計事務所でアルバイトさせてもらう方がより実践的な現場を見ることができるメリットもあります。

 

ではどのようなケースでお手伝いは有効に活用できるのか、あるいは積極的にお手伝いに時間を割くと良いのでしょうか?

 

先輩のお手伝い、3つの効用

冒頭の友人は、幾度もいろんな人のお手伝いをしてきたという猛者。

当然その中には手伝わなきゃ良かったという経験もあったそう。

その中で「これはアリ」と合意に至ったケースを3つご紹介します。

 

①人脈づくり

②第一線の戦いを知る

③自分の制作物として取り組む

 

まず①について。

Aさんに接触したい理由があるけれど、直接は難しい。

そこでAさんと関係のあるBさんのお手伝いをすることで恩を売り、Aさんを紹介してもらう。

という場合ですね。めっちゃ性格悪い…

具体的にはたとえば自分が将来働きたいと思っているAさんの事務所にBさんが出入りしているとか、そんな感じ。

僕の大学では後々入りたい研究室の先輩を手伝う人が多かったので、暗黙のうちに①を求めていたのかもしれません。

 

続いて②

書いた通り、コンペ獲りまくってるとか、学内で高く評価されていて、純粋に近づきたい場合。

その人がどんなことを考えて設計しているのか、どのように表現しているのかを盗みたいと思える人がいれば、お手伝いすることほどスムーズに近づく方法はないかもしれません。

積極的に質問してみたり、指示を受ける前に自分なりの仮説を立ててみたり、能動的に動いてたくさん吸収しましょう。

 

最後に③

これは禁じ手という人もいるかとは思いますが…

あまりにもデキない先輩をわざと選んで、その人の能力を超えたところで自分の力を発揮してしまうパターンです。

卒業制作は、提出物に不足があれば留年してしまうわけなので、とことんダメな人は優秀な後輩をゲットできたら、神にもすがる思いでいろいろ託してしまいます。

追い込まれれば追い込まれるほど、正常な判断能力が失われていくので、そのうち後輩の思い付きをそのまま採用したり、果ては部分的に丸投げしてしまうといった状況にもなっていく。

そうなればこっちのモンで、先輩の傘をかぶって、自分の制作物としてプレ卒業制作に取り組めてかつ先生方の講評も聞けるラッキーな状態にもっていけます。

すると部分的にでも2回、卒業制作を経験できてしまうので、自分自身の卒業制作においてかなりのアドバンテージを得られることになるわけです。

 

ご利用は計画的に

先輩のお手伝いを有意義に活用するのか、あるいは無能な先輩に振り回されて貴重な時間を浪費してしまうのか。

あなたの時間をどのように使うのか、それはいつだってあなた次第なんですよ。

【建築学生のための就職相談】このまま建築業界に進んでいいのか?と一度でも思ったら読む本2選

就活戦線を勝ち抜くためのハウツー本、たくさん出ていますね。

エントリーシートの書き方や面接対策についてまとめたものや、建築関係の就活に特化してポートフォリオのまとめ方などについて書かれたものも。

こうした実際の戦いの場で有効になるツールとしてのハウツー本を手に取る前に、就職活動にどう向き合えばよいのか、考えるヒントとなる本をご紹介したいと思います。

 

なんのために就職するのか?

多くの就活生は、一度も会社に所属したことがないのではないかと思います。

なんとなく良い会社に入れればそれなりの給料をもらいながら安定した生活を得られるのではないかと思っている人。

やりたいことを明確にもっていて、「この会社なら」それが実現できるのだと強い動機をもっている人。

就活がうまくいかないと、大学を出てから生きていけないという危機感だけに突き動かされている人。

 

特に最近は建築で面白いことができるのか、という不安を抱える人もいるでしょうし、建築家として独立したいと思って頑張ってきたけど、周りの優秀な学生を見渡して、とても自分はそんな器ではない、だけど普通にサラリーマンになるのも嫌だ、なんて人もいるでしょう。

建築を通して自分のやりたいことを実現するために、どれほどのステップを踏まなければいけないのだと途方に暮れる人もいるかもしれません。

そもそも行きたい会社に入れるのかどうか、不安を抱える学生に対し、終身雇用の崩壊だとか、年金受給年齢の引き上げだとか、安定した生活を送っていそうな会社員をも不安にさせるニュースが日々目に入ってきます。

 

そんな状況で落ち着いて就職先を選べという方が無茶ですよね。

そこでおすすめしたいのが、学生こそビジネス書、とくにキャリアについて書かれたものを読んでみるとよいのではということです。

 

ビジネス書というのは、普通に仕事をしていたらだれでもぶつかるような課題を乗り越えるために書かれた処方箋です。

長い人生においてどのようなキャリアを志向するのか、という問題は、第一志望で入社して安定的な生活を得たかのように見えるサラリーマンにこそついて回る問題。

現役の会社員が職場選びに悩んでいるのだ、そしてそれに対しどのような考え方が有効なのかを知ることは、これから就活に臨む学生にとってもヒントを与えてくれると思います。

特に学生というモラトリアム期間を終えて社会に出ることに対し、漠然とした不安を抱える人にとっては、自分の不安や違和感がどこにあるのかを明確にしてくれる効果があるのではないでしょうか。

おすすめは転職をキャリア形成の選択肢として肯定的に書いているものです。

 

北野唯我さんによる『このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法』は、自分という人間の市場価値や、働く会社の選び方といった考え方をわかりやすく、物語り仕立てで書かれた本です。

主人公は、「このまま今の会社にいるのはマズい」と考え転職エージェントに就活の相談をする会社員。

ここで長期的に市場価値を高めていくための会社選びや、業種や職種を選ぶ際の自己分析についてなど、効果的な転職を成功させるための考え方を叩き込まれます。

どういう時に自分は喜びを感じるのか、将来どのような人間になりたいからいまどのようなスキルを得る必要があるのかなど、新卒で入社する際の会社選びにおいても大いに参考になる考え方が書かれています。

年収はその人の能力や会社の成績よりも成長業界であるかの方が重要、やりたいとなりたいを混同することの危険性など、建築でいいのか?と思っている人にはぜひ読んでほしい内容です。

 

もうひとつ、山口周さんの『仕事選びのアートとサイエンス~不確実な時代の天職探し』では、幸福な仕事=天職に就くための考え方が書かれています。

 終身雇用、年功序列が当たり前だった時代が終わり、未来が「不確実な時代」といわれる現代において、キャリアの問題とどのように向き合えばよいのか。

冒頭に、転職にまつわるある数字が紹介されています。

それは転職後に給与が当たるのは全体の25%に過ぎない、という厚生労働省の出している数字。

ここで著者は、「これを根拠に転職を悪と決めつける人が多いがそれは間違っている」と、転職を肯定する立場から持論を展開していきます。

自身の体験も交えながら、転職のハードルと思われてきたさまざまな課題への対処法を紹介しながら、天職へ至る道を示している。

新卒で入社する会社でどのようなスキルを身につけ、転職も当然あり得る選択肢としてもっておく、その戦略を知っているだけでも、最初の会社を選ぶ心理的ハードルがぐんと下がるように思います。

 

どちらも2時間ほどでサクッと読めて、社会人になってからも役に立つ良書ですので、ぜひ手にとってみてください!

未熟なものを世に出すことの功罪と期待値コントロール

あらゆる人が表現者となりうるいま、とにかく行動しよう、失敗を重ねて成長しようといろんなところで耳にします。

このブログでも度々、情報発信のメリットについて触れてきました。

なにもテキストコンテンツに限らず、あらゆるコンテンツやサービス、プロダクトなどをリリースすることへのハードルがますます下がってきています。

かつては大量生産・大量消費に耐えうるモノにしか市場が開かれていなかったため、少ないつながりの中で手売りする程度ならともかく、だれもがアクセスできるようにするにはそれなりのチェック機能がありました。

それが取り払われたいま、素人が思いつきでつくった、十分な検証が行われていないプロダクトと、大手企業が数年間・数百人・数億円のリソースを投じて開発したプロダクトが同時に市場を流通します。

 

もちろん同じような売り場に並ぶことはないでしょう。

ただ、たとえばインターネットで商品やサービスの情報を得ようとすると、ブランディング次第では前者の情報流通量が後者を上回る可能性がある。

大手企業のCMより個人の口コミがバズることが訴求力につながる場合もある。

単独のサービスやプロダクトのウェブサイトであれば、動きの遅い大手企業よりもトレンドをキャッチした高いクオリティの絵作りを実現することも可能でしょう。

 

こうした世の中の動きは、個人の可能性が開かれたチャンスととらえることもできる一方で、将来的なリスクにつながる危険性も孕んでいます。

今回は発信者・表現者の側から、そのリスクとどう向き合うかについてまとめてみます。

 

未熟なものを世に出すことの危険性とは

先日、とある施設を訪れました。

ブランディングが非常に成功していて、代表の方は業界の新星として注目され、数多くのファンを抱えるインフルエンサーです。

僕自身もその方の発するメッセージや、新しい価値観を生み出していこうとする姿勢には共感するところもあり、一度訪れてみたいと思っていた施設でした。

 

結果、まあ記事のタイトルからご想像の通り、残念だな、未熟だなと感じるクオリティでした。

ただ、サービスと価格設定のバランス自体はぼったくりという印象はなく、なにも知らずに訪れていたらそれなりに満足できていたと思います。

事前に期待していたイメージとのギャップが大きくて、そのことがサービスに対する信頼に影響してしまった、もしかしたら同じ方が手掛ける別施設も残念なものなのではないかと疑ってしまったわけです。

 

ただ僕が残念に感じてしまった施設自体は、これからサービスが成長していくためには必要な経験なのだと思います。

見かけ上ブランディングが優れている、ということは、サービスの提供者からすると、その施設のうまくいっている点と、反対にうまくいっていない点に対して強く自覚しているはず。

失敗が次につながることは間違いないと思いますし、確実にレベルアップしていくでしょう。

すべてを完璧な状態でリリースできればそれに越したことはありませんが、これだけ変化のスピードが早まっている時代には、ある程度傷つきながらも進んでいくタフさが求められると思います。

 

問題なのは、良い面だけを切り取ったブランディングを是としていること、そしてそれが生むギャップが、現在運営されているほかのサービスや今後手掛けるであろうサービスに対する不信感につながってしまうことです。

 

未熟さと期待値のコントロール

ここでイチ消費者として、その施設をこき下ろしたいわけではありません。

自分自身の表現活動に必ずついて回るその未熟さと、どう向き合っていけばよいかを考えてみたいのです。

 

 僕自身は、会社員として多数の決裁者やコンテンツに関わる関係者の目が通った、ある意味失敗の許されないコンテンツと、個人でのnoteやウェブ連載での執筆といった、クオリティレベルを自由に設定できるコンテンツの双方に関わっています。

後者の方が自分の興味関心をそのままかたちにし、それを読んだ人の反応もダイレクトに見て取れるという点で学びが大きく、今後も継続していきたいと思っています。

一方で前述したような、未熟なものを出すリスクを抱えていることも事実です。

 

ではクオリティを担保するためのチェック機関を設けるべきかどうか。

当然あり得る選択肢だとは思いますが、コストもかかりますし、本来追求したい部分とは異なる場所にリソースを割くストレスがあるだろうと思いやっていません。

ただひとつ、心がけているのは実感と大きくズレる期待値のコントロールは避けるということです。

 

ネット記事での過剰な期待値コントロールの例としては、煽りタイトルや高額有料設定にしておいて、中身が伴っていないものなどがありますね。

僕自身がブランディングが不得手で、思ったことを思ったように書いてしまうため、期待値コントロールもクソもないのですが。

ただ記事を書いてSNSでシェアする場合に、「これは良いモン書けたなー」という時と、「完全燃焼とは言い難いな」という時では記事に付けるコメントの熱量が大分異なっていると思います。

このブログに限ってはほぼノーコメントでそのままTwitterに投稿していますしね。

 

もうひとつ、本当はやるべきだろうけれどできていないのが、好意的な反応だけでなく、批判的なコメントをいただいた際にも公にしておくこと。

どうしてもひとりで書いていると、事実誤認や解釈の違いが出てしまったり、あるいは純粋に面白くない、読むに足らんといったコメントをいただくこともあります。

前者に関しては、読者の方に間違った情報を伝えてしまったことになるので、過去一度だけですがご指摘いただいた情報をもとに再調査の上、改めて再投稿という結果に至ったことがあります。

その際はどういう誤りがあり、結果どのように修正したのかは明示して対応しました。

 

一方で後者のような批判的な感想シェアするようなことはしてきませんでした。

単純に感想ツイートの総量がまだまだ少ないということもありますが、たとえば100人が感想をツイートしていたとして、好評と不評がちょうど半々だったとします。

ここで50の高評価ツイートのうち、30個をリツイート、低評価ツイートはひとつもリツイートしなければ、結果的に記事への期待値コントロールになってしまうと思うのですよね。

いずれ僕もそんな風にたくさんの方から反応してもらえるようになった場合には、心に留めておこうと感じた体験でした。

 

専門性を生かしてアウトプットを継続する簡単な方法

継続は力なり。

その言葉の意味を、特にここ最近は文章を書くスピードに対して感じるようになりました。

ライターとして仕事を請けるようになったころ、取材後構成を検討して、「よしこの感じでいこう」と決めてから実際に書き上げるまで、3,000字の原稿で最低でも2日間は必要でした。

いまでは3~4時間あればどうにか形になるかな、というところまで書くスピードが上がってきています。

また当初は取材後、1週間以内に原稿にしないと熱量が下がってしまっていましたが、次第にその期間も延びていっているのを感じます。

ちなみに当ブログの記事は、毎回30分以内を目標に書くようにしています。

 

これはひとえにアウトプットを継続してきたからだと、思います。

取材を経て書くテーマを決め、構成を考える、それから不足情報を補いつつ執筆する。

その繰り返しにより1つの記事にかかるリソースを段々と減らし、今後の企画について検討する時間に回せるようになってきました。

1ヶ月の間で執筆する本数も、徐々に増やせるようになってきています。

 

本ブログではアウトプットを継続していくことのメリットを、プロのライターを目指す人だけでなくより汎用性のあるものとして書いてきました。

今回は専門ジャンルをもつ人が、アウトプットを継続するために役立つ考え方についてまとめておきます。

 

ネタは専門外のコンテンツに触れる時に考える

見出しそのままです。

僕自身は建築を専門ジャンルとしており、執筆テーマも建築についてです。

建築分野の情報をさらっている時に、建築について書くネタを考えていると、どうしても「これについては知識不足だな」とか「これはすでに○○さんが書いていたな」と、自分が書かなくても良い理由を探してしまいます。

 

そうではなく、建築とは直接的に関係のない情報に触れている時に、そこでの気づきから自分の専門分野に引きつけて書くことができないかを考えてみる。

あるニュースを見る時に、そこからなにかネタにならないかと考えていくと、そのニュースが問題になっている背景に興味が向きます。

そうやって掘っていくと、「これは建築でいえば○○と似た構造だな」とか、「こういう問題意識があの建築家の活動につながっているのかな」とか、自分の専門分野での知識とつながっていくわけです。

この時点で、自分なりの仮説をかたちにしたいというモチベーションが高まっていることでしょう。

そうなると、アウトプットのために必要な専門分野のリサーチも苦にならなくなっていきます。

 

最終的なアウトプットはどのようなかたちになっても構わないと思います。

重要なのは、常日頃から専門分野以外の情報に目を光らせていくこと。

建築の歴史が一通り頭に入っている人であれば、人類史に目を向けると一気に知的好奇心が開いていくと思いますよ。

せっかくなので、僕に世界史のダイナミズムを教えてくれた書籍をご紹介しておきます。

講談社学術文庫の「興亡の世界史」シリーズです。

世界史上に起こったさまざまな出来事を「事件」としてフィーチャーするのではなく、その背景にどのような時代の空気感があったのか、人びとの生活やその時代を支配していたイデオロギーから、連鎖的な人びとの動きの発露としての世界史を解き明かしていこうというシリーズです。

特に「近代」という時代がどのように用意されたのか、そしてなぜ近代がヨーロッパ中心の時代になったのかを探る本書は、建築の近代化にもつながっていくスリリングな一冊です。

僕自身もいずれこのあたりの話を手がかりに、第一次世界大戦前のオーストリア建築の動きについて書いてみたいなぁ、などと思っています。 

 

第2回 #ペリカンナイト の感想をつらつらと

2019年12月20日に開催された第2回ペリカンナイトに参加してきました。

建築界隈で面白い活動をされてる方々が登壇する建築界の一大忘年会。

主催されている創造系不動産の佐竹さんご自身が建築ラッパーとして活動されていることもあり、クラブ会場を貸し切った忘年会の雰囲気で行われました。

途中退場し移動の電車内で打ってるので、間違い・不足等ありましたらご指摘ください。

 

f:id:ronro_bonapetit:20191220223156j:image

 

今年のテーマは、

建築と絵

建築とダンス

建築とマーケティング

建築と音楽

の4つ。

それぞれに建築という専門性を軸に持ちつつ、建築以外の表現を追求されている方々が揃いました。

独立し建築設計事務所を運営している人、建築以外の道で食べている人、これからその表現が仕事になっていきそうという人、まだ学生という人までバラエティ豊富な面々。

個々人でのパフォーマンス・トークの後に、各ジャンル毎のトークセッション。

建築を学んだことがいまの活動にどう生かされているか、あるいはその表現から建築に還元し得る可能性を、建築家の山道拓人さんの進行でまとめていく趣向です。

 

別途運営からきちんとレポートは出ると思うので、個人的に「これは建築学生みんなに聞いて欲しかった」ポイントを。

 

それは建築とマーケティングをテーマにした、建築YouTuberしばたまるさんと、エイトブランディングデザイン代表の西澤明洋さんとの対談でのこと。

しばたまるさんは今年の春に大学院を修了したばかりの24歳。

学生時代から続けてきたブログで培った知見をもとに、建築の各分野のスペシャリストに教えを請うYouTubeチャンネル「ぼくは巨匠になりたい」の運営を開始し、スタートアップ企業とコラボしたプロダクトデザインのコンペや、建築と関わる商品のブランディングデザインを手掛けています。

西澤さんはその道のパイオニアでもあり、ブランディングデザイン界の「巨匠」に、新人が「教えを請う」、まさしくしばたまるさんのYouTubeと同じ構図が再現されました。

 

お互いのプレゼンが終わった後に、建築を学ぶ学生であれば誰もが不安に感じているこの質問を、しばたまるさんが西澤さんにぶつけます。

「どうやったら自分のやりたいことで稼げるようになりますか?」

 

建築学生と思われる若い来場者が多く集まっていたこともあり、「よくぞ聞いてくれた」と息を飲む会場。

しばたまるさん自身、学生時代に周りの学生があまりに優秀ななか、建築設計では食べていけないのではという不安もあっていまの活動を始めたそう。

おそらく用意していた質問なのかな、と思いつつ、「お酒が入ってないと聞けないので」と前置きしつつド直球を投げるあたり、抜群のコミュニケーション力を発揮します。

 

西澤さんの返しも明快でした。

「まだ24歳なんだから、お金のことなんか考えなくていいんだよ。俺もその歳の頃はチキンラーメンで食いつないでたんだから」

 

…失礼。こっちでした。

「お金を稼ぐことを考えてちゃダメだよね。まずは自分のやりたいことはこういうものなんだ、っていう実績を揃えるまでは、採算度外視でやってたよ。で、僕のやりたいブランディングデザインってこういうものだ、っていうプロジェクトがいくつかできた頃から、ようやく回り始めたという感じ。だんだんそのサイクルを大きくしていって、35歳くらいの頃かな、ようやくちゃんと回る、食べていけるようになっていったのは」

 

このやり取りは、現場にいた多くの学生に勇気を与えてくれるものだったのではないでしょうか。

しばたまるさんに向けられた言葉ではあったものの、西澤さん自身彼は「もうできている」と語ったことも考えると、彼の先にいる全国の建築学生に向けたメッセージだったのではないかと感じました。

なかなかこういう話は、学校や本では学べないですから。

本当にやりたいこと、自分の追求したいことが見つかったなら、必死で駆け抜けてみるのもひとつのキャリア選択ですよね。

 

ではでは。

勝手に色々書いちゃったので、怒られないように西澤さんの近著としばたまるさんのYouTubeチャンネル、貼っておきます⭐︎

どちらも建築に関わる人には学びがつまってるので、ぜひ!

https://www.youtube.com/channel/UCx3dokFQ-35HzbGUzo73DJw

 

 

専門性を生かしてアウトプットを継続する簡単な方法

継続は力なり。

その言葉の意味を、特にここ最近は文章を書くスピードに対して感じるようになりました。

ライターとして仕事を請けるようになったころ、取材後構成を検討して、「よしこの感じでいこう」と決めてから実際に書き上げるまで、3,000字の原稿で最低でも2日間は必要でした。

いまでは3~4時間あればどうにか形になるかな、というところまで書くスピードが上がってきています。

また当初は取材後、1週間以内に原稿にしないと熱量が下がってしまっていましたが、次第にその期間も延びていっているのを感じます。

ちなみに当ブログの記事は、毎回30分以内を目標に書くようにしています。

 

これはひとえにアウトプットを継続してきたからだと、思います。

取材を経て書くテーマを決め、構成を考える、それから不足情報を補いつつ執筆する。

その繰り返しにより1つの記事にかかるリソースを段々と減らし、今後の企画について検討する時間に回せるようになってきました。

1ヶ月の間で執筆する本数も、徐々に増やせるようになってきています。

 

本ブログではアウトプットを継続していくことのメリットを、プロのライターを目指す人だけでなくより汎用性のあるものとして書いてきました。

今回は専門ジャンルをもつ人が、アウトプットを継続するために役立つ考え方についてまとめておきます。

 

ネタは専門外のコンテンツに触れる時に考える

見出しそのままです。

僕自身は建築を専門ジャンルとしており、執筆テーマも建築についてです。

建築分野の情報をさらっている時に、建築について書くネタを考えていると、どうしても「これについては知識不足だな」とか「これはすでに○○さんが書いていたな」と、自分が書かなくても良い理由を探してしまいます。

 

そうではなく、建築とは直接的に関係のない情報に触れている時に、そこでの気づきから自分の専門分野に引きつけて書くことができないかを考えてみる。

あるニュースを見る時に、そこからなにかネタにならないかと考えていくと、そのニュースが問題になっている背景に興味が向きます。

そうやって掘っていくと、「これは建築でいえば○○と似た構造だな」とか、「こういう問題意識があの建築家の活動につながっているのかな」とか、自分の専門分野での知識とつながっていくわけです。

この時点で、自分なりの仮説をかたちにしたいというモチベーションが高まっていることでしょう。

そうなると、アウトプットのために必要な専門分野のリサーチも苦にならなくなっていきます。

 

最終的なアウトプットはどのようなかたちになっても構わないと思います。

重要なのは、常日頃から専門分野以外の情報に目を光らせていくこと。

建築の歴史が一通り頭に入っている人であれば、人類史に目を向けると一気に知的好奇心が開いていくと思いますよ。

せっかくなので、僕に世界史のダイナミズムを教えてくれた書籍をご紹介しておきます。

講談社学術文庫の「興亡の世界史」シリーズです。

世界史上に起こったさまざまな出来事を「事件」としてフィーチャーするのではなく、その背景にどのような時代の空気感があったのか、人びとの生活やその時代を支配していたイデオロギーから、連鎖的な人びとの動きの発露としての世界史を解き明かしていこうというシリーズです。

特に「近代」という時代がどのように用意されたのか、そしてなぜ近代がヨーロッパ中心の時代になったのかを探る本書は、建築の近代化にもつながっていくスリリングな一冊です。

僕自身もいずれこのあたりの話を手がかりに、第一次世界大戦前のオーストリア建築の動きについて書いてみたいなぁ、などと思っています。 

 

編集・ライター希望者必見!~ポートフォリオになるブログ運営のススメ~

将来編集者になりたい! ライターになりたい!

僕自身もそんなことを考えていた建築学生のひとりでした。

コンテンツの企画・制作者として、職能としての興味とともに、建築という専門知識を生かしたい。

学生時代、そんな漠然とした希望と果たしてそんなことが可能なのかという不安とを抱えていました。

現在編集・ライターの両方を仕事するに至った経験から、いま自分が学生だとしたらどのようなことができるか、考えてみます。

建築だけでなく、専門性を生かして活躍したい人に役立つ内容だと思いますよ。

 

初期投資0で始めるきっかけづくり

編集者あるいはライターとして食べていくためには、

①会社員として編集・ライターを職種にする

②フリーで編集・ライティングの仕事を請ける

③自らメディアを立ち上げ収益を上げていく

といった選択肢があります。

 

多くの人は、どのようにしたら①の方法を採れるかをまず考えると思います。僕自身もそうでした。

しかし大学で設計を学び設計の仕事に就く人と比べ、編集・ライティングの仕事はあまりにかけ離れているように見えます。

また専門領域に特化したメディアとなると全体の会社の数も少なく、かつ毎年求人を出しているとも限らないため、少数の求人に多くの人が応募する状況になります。

もともとアルバイトで働いていた人がそのまま登用されるケースも多いため、特に地方にいる学生にとってはチャンスが限られてしまうように感じられるでしょう。

 

一方で②③の方法を採っていきなり学生から独立、というのも現実的ではありません。

未経験の人が請けられる仕事といったら、クラウドソーシングや知り合いの伝手で孫請のようなお小遣い程度の金額にしかならないものに限られてしまうでしょう。

③を最初からできてしまう人はこの記事を読む必要はないでしょうが、それでもどこかのタイミングで企業に所属してみると、大きな組織の意思決定のメカニズムや企業人としての仕事のお作法など色々勉強できるので検討してみてください。

 

さて、①の方法を実現するために学生時代からなにができるか。

答えは非常に簡単で、自らコンテンツを作ってみようということです。

 

編集者にしろライターにしろ、求められるのは自分が面白いと思うものをなにかしらのかたちにして人に届けること。

役割の違いこそあれ、最終的なゴールは同じですし、ある人が編集したものを見てライターとしてのスキルを計ることも、またその逆もある程度は可能です。

選考過程で見られる一般的な能力はどのような業界・職種を目指すにしても共通しているとすると、編集者あるいはライターとしての可能性を見せることができれば良いわけです。

 

その手段として、初期投資0で始められるブログをポートフォリオとして活用してみてはどうでしょうか、というご提案です。

ブログを書くにしても、どのようなコンテンツを書いたら面接で他の人と差別化できるか、その視点をもつだけで大きく取り組み方が変わってくるはずです。

明確に「あの企業に行きたい」という会社があるのであればその会社の文化に合うようなものを考えるも良し、職種にこだわりたいのであれば、さまざまなコンテンツを用意しておいて、場面によってどの記事を見せるかを使い分けるのも良いでしょう。

 

学生の特権として自大学の先生にアプローチしやすいという利点があります。

ある先生の専門領域についてインタビューして記事にする、あるいは自身の研究過程でコンテンツ化できそうなものがないか探してみる。

読み物として面白い記事が書けるのであれば筆力のアピールにもなりますし、複数の協力者を介在したコンテンツを世に出せるのであれば、それは立派な編集の仕事です。

そうやってブログ運営であっても、ひとつひとつの記事に目的をもって取り組んでいくと、その試行錯誤の積み重ねは強力な武器になるでしょう。

 

仮に、いずれはメディアに携わる仕事がしたいけれど、タイミング良く求人がなかった、という人でも、まずは建築業界に就職し、趣味としてブログを育てていくという方法もあります。

中途採用であれば、まったくの未経験者より、個人ブログであっても実績があるかないかでは大きく採用担当者の見る目も変わってくるはずですからね。

 

個人でのウェブ発信について、僕自身の取り組みをまとめた記事もぜひ参考にしてみてください⇩

www.ronro.work