ビジネスライクな設計課題への取り組み~先輩のお手伝い編~

年始休暇がそろそろ終わりますね。

大学が始まったら、先輩の卒業設計あるいは修士設計のお手伝いを予定している建築学生も多いと思います。

 

僕自身は学生時代、先輩の手伝いからは逃げに逃げ、一度も動員されることなく自ら取り組みたいことに集中しました。

先輩の手伝いをすることに意義を見出だせなかったためで、よほど明確な目的がない限りは貴重な時間をもっと違うことに投資すべきだと思っています。

ところが、年末久しぶりに会った友人が、学生時代に戦略的に数々の先輩の手伝いに取り組んでいたというので、どんなメリットがあるのか聞いてみました。

彼の経験も「それはそれでアリだな」と感じたので、どういうケースにはお手伝いが有意義になり得るか、まとめておきたいと思います。

 

基本的に大して得るものがないことは自覚しておこう

卒業制作ともなると、1ヶ月前には敷地模型などプランが固まっていなくても着手できる制作物をつくり始め、ラスト2週間で各スケールの模型や図面、パース、ドローイングといった提出物を揃えるのが基本だと思います。

タイムマネジメントがしっかりできている人ならともかく、多くの場合ギリギリまで最終のアウトプットが決まらず、最後の最後に多くの後輩を動員し連日徹夜で完成させるという人も多いはず。

せっかく頑張って模型を作ったのに、プレゼンでは一切触れられずに終わり、などと虚しい思いをした人もいることでしょう。

そこから学べることの多くは、お手伝いという名の奉仕でなくともより効率的に学ぶ機会はつくれるものです。

 

模型の作り方や図面・ドローイングといった表現においては、先輩に教えてもらうよりも自らの制作物として試行錯誤する方がはるかに定着するでしょう。

ほぼ無給のお手伝いより、設計事務所でアルバイトさせてもらう方がより実践的な現場を見ることができるメリットもあります。

 

ではどのようなケースでお手伝いは有効に活用できるのか、あるいは積極的にお手伝いに時間を割くと良いのでしょうか?

 

先輩のお手伝い、3つの効用

冒頭の友人は、幾度もいろんな人のお手伝いをしてきたという猛者。

当然その中には手伝わなきゃ良かったという経験もあったそう。

その中で「これはアリ」と合意に至ったケースを3つご紹介します。

 

①人脈づくり

②第一線の戦いを知る

③自分の制作物として取り組む

 

まず①について。

Aさんに接触したい理由があるけれど、直接は難しい。

そこでAさんと関係のあるBさんのお手伝いをすることで恩を売り、Aさんを紹介してもらう。

という場合ですね。めっちゃ性格悪い…

具体的にはたとえば自分が将来働きたいと思っているAさんの事務所にBさんが出入りしているとか、そんな感じ。

僕の大学では後々入りたい研究室の先輩を手伝う人が多かったので、暗黙のうちに①を求めていたのかもしれません。

 

続いて②

書いた通り、コンペ獲りまくってるとか、学内で高く評価されていて、純粋に近づきたい場合。

その人がどんなことを考えて設計しているのか、どのように表現しているのかを盗みたいと思える人がいれば、お手伝いすることほどスムーズに近づく方法はないかもしれません。

積極的に質問してみたり、指示を受ける前に自分なりの仮説を立ててみたり、能動的に動いてたくさん吸収しましょう。

 

最後に③

これは禁じ手という人もいるかとは思いますが…

あまりにもデキない先輩をわざと選んで、その人の能力を超えたところで自分の力を発揮してしまうパターンです。

卒業制作は、提出物に不足があれば留年してしまうわけなので、とことんダメな人は優秀な後輩をゲットできたら、神にもすがる思いでいろいろ託してしまいます。

追い込まれれば追い込まれるほど、正常な判断能力が失われていくので、そのうち後輩の思い付きをそのまま採用したり、果ては部分的に丸投げしてしまうといった状況にもなっていく。

そうなればこっちのモンで、先輩の傘をかぶって、自分の制作物としてプレ卒業制作に取り組めてかつ先生方の講評も聞けるラッキーな状態にもっていけます。

すると部分的にでも2回、卒業制作を経験できてしまうので、自分自身の卒業制作においてかなりのアドバンテージを得られることになるわけです。

 

ご利用は計画的に

先輩のお手伝いを有意義に活用するのか、あるいは無能な先輩に振り回されて貴重な時間を浪費してしまうのか。

あなたの時間をどのように使うのか、それはいつだってあなた次第なんですよ。