ビジネスライクな設計課題への取り組み~プロジェクトマネジメント編①アウトソーシング~
建築学生のみなさん、こんにちは。
学部4年生の方は、卒業制作のラストスパートという状況でしょうか。
卒業制作で成果を上げるためには、アイディアの強度や設計の精度のほか、どれだけアウトプットのクオリティを高められるかも重要になってきます。
そのためにプロジェクトマネジメントの思考を少しでも知っていると、有利に制作を進められるので、本ブログで何回かにわたって書いてみたいと思います。
初回はその前段となる、人員確保のお話し。
なんのために、なにを手伝ってもらうのか?
先輩の設計を後輩が手伝う。
建築学科においては当たり前の光景ですが、そもそもなぜお手伝いをお願いする必要があるのでしょうか?
多くの場合、模型をつくる作業を分担して作業スピードを上げる、パースの描き込みなどを分担してアウトプットの質を高める、といった目的によるものと思います。
ビジネスの現場ではこのように必要な業務の一部を他者に委託することを、アウトソーシングと呼びます。
卒業設計をひとつのプロジェクトと考えると、後輩にお手伝いを頼むのも、アウトソーシングといえますね。
ビジネスにおいてアウトソーシングを活用するメリットは、
①専門的な業務を外注することで、高品質短納期を実現できる
②単純な業務を外注することで、自社要員を重要業務に集中できる
などが大きなところでしょうか。
①は単価も高く自社で賄うことが難しい業務を、②は自社でも実施可能な業務をできるだけ単価を抑えて依頼するケースが多いです。
卒業設計にあてはめてみましょう。
基本的に年次の低い学生に作業をお願いするのであれば、スピード・クオリティともに自ら手を動かした方が高いパフォーマンスを発揮できると考えられます。
それでも後輩に手伝いを頼むのは、②を目的としているから。
1人で模型も図面も全部やるには1週間必要なところ、できるだけ人数を集めて作業を分担してもらうことで作業日数を2日に収める。
そうすると5日間は案をブラッシュアップしたり、ディテールまで設計を詰めるなど、自分にしかできない作業に充てることができるわけですね。
(稀に①のパターン、たとえば自分では到底描けないようなドローイングを代わりに書いてもらうとか、レンダリングのためのモデリングをお願いするといったケースもあると思いますが、特殊なケースなためここでは触れません)
さて後輩を動員する目的がわかったところで、ではどのようにして確保するか。
研究室の上下関係等で自動的に必要人数を集められる仕組みになっている大学などはともかく、後輩側にも選ぶ権利がある場合、できるだけデキる後輩にお願いしたいとなるとそれなりの工夫が必要です。
また個人的には、以下の記事で書いた通り、後輩側からすると先輩の手伝いは控え、より自分に必要な時間の使い方を考えるべきだと思っています。
それでも後輩に手伝ってもらいたい。
ならばシンプルに、「この人の卒業制作を手伝いたい」と思わせる方法を考えるのが最適でしょう。
金銭や人柄を武器に人員集めを優位に進めようとする人もいますが、まったくワクワクしないものを手伝うのは後輩にとってもストレスになります。
お互い気持ちよく、お互いの役割を全うできるようにするために、自身の案をできるだけ強度のあるものに高めることを第一に考えましょう。
そうすれば自ずと優秀な人も集まってきますし、高いモチベーションで取り組んでもらえれば想定以上のパフォーマンスを発揮してくれる可能性もあります。
アウトプットのクオリティ次第では、自分の実力以上の評価を獲得できるのが後輩も巻き込んで取り組む卒業設計のメリットです。
ラストスパート、頑張ってください。