ショートカットで学ぶ建築史〜歴史の目次把握編〜

建築学科に入って1、2年経ち、徐々に授業や課題で建築に触れる機会が増えてきた。

そろそろ本腰入れて建築の勉強をしないとマズいぞ、けど先生に勧められる建築の本は難しいし、課題も忙しくて全部読む時間もないし…と思っているそこのあなたに朗報です。

今回は、効率よく建築史の全体像を把握し、自分の求める解答に最速でアプローチする方法をご紹介します。

 

歴史の目次を知るところからはじめる

わざわざここで取り上げるまでもないことですが、建築史の概要を紹介する教科書は多数出版されており、定番のロングセラーも出揃っています。

ビジュアル重視のもの、テキスト中心のものなどそれぞれ特徴があるので、まずは入り口として一冊手に取って読んでみましょう。

おおまかには西洋建築史/日本建築史/近代建築史にわかれるので、それぞれざっくり知っておくイメージです。

このあたりが定番のシリーズでしょうか。

それぞれに西洋建築史/日本建築史/近代建築史のラインナップが出ているので見てみてください。

 

そのほか、新建築社が20世紀の建築を総括するために出版した『建築20世紀』、建築史上の重要なキーワードを検索できる『マトリクスで読む20世紀の空間デザイン』や『建築論事典』あたりは多くの学生がもっていた、辞書的に使える書籍ですね。

絶版になってしまっているものもあるので、図書館で探してみましょう。

このあたりは全部通して読まずとも、必要な時に必要な部分を引っ張り出して知識の確認に使えるスグレモノ。

 

ざっと定番をさらったところで、本題です。

歴史について書かれた本を読んでいくと、特に近代以降の建築史において、建築論について語られる場面に遭遇します。

「ギーディオンの空間・時間・建築が…」「アドルフ・ロースが…ヴェンチューリが…」

教科書的には、個々の論に頁を割くことができないので、いついつどんな人がどんな問題意識でこんな論を書いて、当時の建築家に大きな影響を与えました、みたいな感じで軽く触れておくわけです。

 

これを愚直にひとつひとつ、読みこなしていく時間と体力のある方は、以下の内容は無視してください。

自ら知識を体系化していけるのであればそれに越したことはありません。

 

* * * * * *

 

ここでひとつ質問です。

そもそもなんのために建築史を学ぶのでしょう?

単位のため? 大学院の試験で必要だから? 就活目的? 

安心してください、少なくとも一般企業の就活で建築史の知識を問われることはないと思います。

 

目的はただひとつ、あなた自身の活動に生かすためですよね。

優れた建築を設計するためなのか、研究のために知っておくべきことを抑えるのか。先輩や先生との対話に困らないようにしたい、という動機もあるでしょう。

仕入れた知識を使えるようにするためには、名著と呼ばれるものを順を追って読んでいくのは遠回りな可能性があります。

実践的な知識の活用との往復を考えた方が、知識の吸収にも役立つよ、というお話は以前こちらの記事でも書きました。

必要な時に必要な知識にアクセスできる、膨大な建築の歴史の中でどこを掘ればいま自分に必要な考え方を知ることができるのか、それをわかっておくことが実践的に生きる知識の習得に役立ちます。

そのためにまずは目次を把握しておこう、ということです。

 

目次を立体化するために

教科書を読めば、おおよそいつ頃どのような問題意識が生まれたのか、把握することはできます。

ただ、どのトピックを掘ればいまあなたが直面している課題のヒントが見つかるのかは、掘ってみないとわからない。

一歩進んでどのトピックを掘ればいいのか、そのヒントを与えてくれる、建築史の目次を立体化するための近道。

それは、重厚長大な建築論の手引きとなるガイダンスを知っておくことです。

 

建築評論家の五十嵐太郎氏が監修するこの2冊は、近代の主要な建築論を紹介するガイドブックです。

さまざまな論者が、個々の書物について簡潔に論じており、

・どのような時代背景で

・どのような問題意識のもとに書かれた

・どのような内容の書籍か

・その後その問題はどのような経緯を辿ったか

・現代の視点ではどのように読み解くと良いか

といった視点で紹介されています。

現代とは社会情勢も、建築の状況もまったくことなる時代にまとめられた書籍を、そのまま読むのではなく、ある程度のガイドラインに触れておく。

すぐに読むことが難しいものについても漠然と内容を知っておくことで、必ず「いま俺にはあの本が必要だ!」という瞬間が訪れます。

また他者が論じた視点をあらかじめ知っておくことで、自分の感想と比較しながら読むことも可能です。

 

ほかにも、より近年に出版された本書は、建築家の難波和彦氏監修によるもの。

こちらは上述の2冊より冊数を絞り、複数の筆者によって1冊1冊を多角的に捉えています。

 

どちらも読みはじめると、取り上げられている書籍を手に取らざるを得ない知的興奮を与えてくれます。

建築論に触れることの効用も、いま直面する問題に立ち向かうための思考法も教えてくれる、処方箋の役割にも使えますので、書店や図書館で探してみてください!